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早稲田吹奏楽団と交響組曲「高千穂」

久々に交響組曲「高千穂」の全曲演奏が行われます。

2016年6月26日(日)板橋区立文化会館第ホールで開催されます「早稲田吹奏楽団第75回定期演奏会」です。

 

早稲田吹奏楽団(ワセ吹)は、早稲田大学の学生さんを中心に約160名のメンバーで構成されるシンフォニック・バンドで、年間を通し充実した活動を行われています。

詳しく見る。

 

先月、常任指揮者の竹内公一さんからメールを頂き、全曲演奏に関連して何かメッセージをとのご依頼がありました。

それで早稲田キャンパスにお伺いし、御礼と若干のアドバイスをお伝えしてきました。

 


作曲後に解ること

交響組曲「高千穂」は、2010年春に作曲した4曲から交響詩的組曲で、演奏時間約30分を超える作品です。

 

作曲している時は夢中でしたが、今6年の時を経て作品を客観的に眺めてみると、当時は気がつかなかったことが見えてくるものですね。

 

2016年6月5日(日)と15日(水)

リハーサルにお伺いしワセ吹の皆さんにそのような想いを直接お伝えしてきました。


交響組曲「高千穂」のイメージなど

音楽作品は「語られるもの」ではなく、あくまでも「演奏されるもの」だと思います。

従って作品について語る(説明する)ことは、作品の概念化やカテゴライズ化に繋がる恐れがありあまりあまり好ましいことではないと思います。

しかし、作曲者の意図やメッセージを知るきっかけになりうる可能性もあるかもしれません。

そんな想いでお伝えしたことを書いてみます。

 

第1曲 天の逆鉾

題材は古事記にある「天孫降臨」と「神武東征」の2つの伝説からとっており、「戦いと勝利」という人間不滅のテーマを扱っています。

ただし神武天皇を表す主題に現れているように、決して不撓不屈・強靭な戦士ではなく、弱さやネガティブな面をも持った人間のドラマとして描いています。彼と共に戦う戦士たちが彼を勇者にしたのです。

全曲を通じ大切なのは、強力な推進力です。

色でいうと、第1曲は鮮やかなでしょう。

 


第2曲 仏法僧の森

組曲中唯一、三拍子系の拍子で書かれています。

第1曲とは正反対に、直線的(縦)ではなく曲線的(横)な表現が求められます。

歌詞を伴った声楽作品ですので映像的にイメージしやすいと思いますが、一拍三分割系の拍子は演奏するのがとても難しく注意が必要です。

鬱蒼と茂る森の中の空間的な広がりや狭さ高いところから低いところへの移動などが、8分の12や8分の6拍子の随所に現れます。

黄昏時のデリケートな色彩のグラデーションを感じていただけるととても良いと思います。

 


第3曲 神住む湖

最初は「神秘の湖」という曲名にしていたくらい私には神秘的な魅力を持った湖「御池」が題材です。

湖の夜明けから日没までの一日が描かれており、ウインドマシーンを使用した嵐の情景も中間部に出てきます。

しかしそれらは単なる風景の描写ではなく、いうまでもなく心象風景の表現です。

この曲の特徴は、拍を細分化することによってテンポを上げ、逆にすることによってテンポを遅くする書法で書かれているということです。

また組曲進行上、初めて長調が現れるのも特徴です。

この曲では、鷺巣 詩郎さんのアニメ曲や小曽根真さんのソロ・ピアノにインスパイアされた楽想が入っています。


第4曲 紺碧の空、雲流る

全編長調で書かれ「紺碧 Dark Blue 」をイメージして作曲、一片の濁りもない明るさや生命と自然への賛歌として書きました。

各楽章の断片が回帰、天孫降臨ファンファーレが柔らかいホルンで形を変えて出現、組曲で重要な枠割を担ってきたピアノがソロで全曲を締めくくるカデンツを奏でるなどなどバラエティに富んだ第4曲です。

ティンパニはこの曲でもソロがありますが、第1曲の方がインパクトが強いので、まずそこで目立ちましょう!

 


大学生バンドにお邪魔して感じたこと

演奏家にとって大切なことは「知性」「感性」「技術」そして「人間性」だと思います。

またアンサンブルの場においては(自動車の運転と同じく)、音を瞬時に認知し判断し、操作することが求められます。

その意味で「さすが大学生は違うなー。」というのが正直な感想でした。

私は中学校や高等学校の指導には伺ったことがありましたが、大学生バンドへの訪問は初めてだったのです。

 

ワセ吹の皆さんの高い集中力と向上意欲、そして指揮者の竹内さんの的確な指導によりおかげ様でなんのストレスもなくとても楽しい時間を過ごすことができました。

 

考えてみると成人を含む大学生の皆さんですので、楽器演奏に必要な身体的能力や前述した演奏家にとって必要な能力も成熟してきた人々の集団なのだなーと再認識しました。

 

コンサート本番まであともう少しです。

ワセ吹の皆さんがこれまで積み重ねられた努力が

本番ステージで十二分に発揮されますよう心から願っています!!