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”歌うタンゴ” が素敵だ!

 illustration:Vector Open Stock

 

普段、疎遠にしていながら

急に会いたくなったり、話したくなったりする

友達っていらっしゃいませんか?

 

私にとって《アルゼンチン・タンゴ》は

そんな存在です。

 

もちろん踊れません。

演奏したり聴くのが大好きなのです。


場末の酒場から

タンゴ(Tango)は、アルゼンチンがその発祥の地です。

 

南米の民族音楽とヨーローッパの音楽が融合して出来上がったこのタンゴ、強烈なビート感メランコリック、そして強い情熱をもった魅惑的な音楽です。

 

19世紀中頃に生まれたこの音楽、その後ヨーロッパに渡り支流を作り、いわゆるコンチネンタル・タンゴ(Continental tango)として発展しました。

ルーツの南米発祥タンゴの方は、アルゼンチン・タンゴ (Argentine tango)と呼ばれています。

 

このタンゴが生まれたのは、ラプラタ川流域の娼婦宿酒場だったと聞いたことがあります。

タンゴの持つ官能性や、一部にある退廃性はこんなところから来ているのでしょうか。

 

さて、タンゴが効果的に使われている映画がありました。

どうぞワンシーンをご覧下さい。

 

 

1992年に製作されたアメリカ映画『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』( Scent of a Woman)のワンシーンです。

 

盲目の元軍人を演じたアル・パチーノが圧倒的な演技でアカデミー主演男優賞を受賞したこの映画で、印象的にタンゴが使われていました。

 

現在インストゥメンタル(器楽的)な音楽として印象の強いタンゴですが、多分、その発祥から考えると「歌」から起こったものではないでしょうか。

 場末の酒場で酒を飲みながら、簡素な伴奏にのせて人生を歌った歌から、アルゼンチン・タンゴは起こったのではないかと私は思います。

 

まさにそう思わせるのが、この映画のシーンに使われているタンゴを作曲し歌った男・・・

カルロス・ガルデル』です。

 

ガルデルの『歌うタンゴ』の魅力

カルロス・ガルデル(Carlos Gardel, 1890年12月11日? - 1935年6月24日)は不世出のタンゴ歌手として知られるアルゼンチンの歌手・俳優であり、その人気の絶頂期に飛行機事故で急逝した事と相まって、現在なおタンゴ界の偶像というにとどまらずアルゼンチンの国民的英雄としての地位を不動のものにしている。(wikipediaより引用)


素晴らしい作品をたくさん残し、たくさん歌っていますが、まずはこれをご覧下さい。


同じくアルゼンチン出身の音楽家「ダニエル・バレンボイム」がベルリン・フィルと演奏したガルデルの名作です。

想いの届く日



 

「セント・オブ・ウーマン」で使われていた次の曲も、ガルデルの代表作といってよいでしょう。

首の差で

 

首の差で来てゴール寸前でたち止まる 

気位の高い若駒め

 

返し馬の折りの言い草が聞えるようだ

「知ってるさな、忘れるな兄弟よ、博打はするなって」

 

首の差で、熱情のあの日

男好きするからかい好きのあの女が

 

微笑んで愛を誓いながら裏切って

焚き火にくべるのさ俺の恋すべてを

 

首の差で、すべてが無駄に

 

キスする彼女の口が悲しみを忘れさせ憂さを和らげる

 

首の差で、もし彼女が俺を忘れるなら

 

そんな人生千度でも投げ出してやるぜ

 

何のために生きてるんだ

 

タンゴは人生に寄り添う音楽

博打と女と酒、どれも人生に喜びと悲哀を与えるものとして、ガルデルはあるがままに歌っています。

欲や悪も、決して否定しません。

幸福も不幸も、あるがままに自然体で受け止めようとしています。


先日、毎朝聞いているJ-WAVEの番組で、瀬戸口寂聴さんがおっしゃっていました。

「人生とは不条理なものと思いなさい。」と。


また、人生のほとんどは「苦」であり、

だからこそ束の間の「楽」が輝くのだとある人が言っていました。


そうさ俺だって苦しいさ!でも、だからこそ人生は愛おしいんだ!!

そうガルデルは言っているようです。


疲れた時、振り向くと、いつも微笑んで話しかけてくれる友人

私にとってガルデルの「歌うタンゴ」はそんな存在です。



ガルデルは永遠に

1935年、ガルデルはニューヨークでの映画撮影を終え、アルゼンチンへの帰途についた。 アルゼンチンにたどり着くまでの道中にあたる南米諸国で、映画宣伝を兼ねたコンサートを催しながら、コロンビアまでたどり着く。そしてコロンビアのメデリン空港から飛び立とうとしたガルデル一行(伴奏ギタリストとしてアルフレッド・レ・ペラらも乗り合わせていた)の乗る飛行機は離陸に失敗、失速して墜落炎上し、ガルデルらは焼死した。(wikipediaより引用)

 

現在アルゼンチンを代表するテノールの一人に「アルセル・アルバレス」がいます。

私は、以前情熱的でありながらリリックな表現も持つこの名テノールが、大先輩ガルデルの作品を録音した際のドキュメンタリーを見たことがあります。

その中で事故の様子が、チャップリンのトーキー映画のような早回しで報じられていた映像がありました。

 

まさに円熟の境地へと向かったであろう、脂の乗り切った40代の中盤でガルデルは他界してしまいます。

しかしだからこそ、彼の存在は「永遠」になったのでしょう。

 

6月24日(水)

間もなく彼の命日が来ます。

 

私もこの曲を聴きながら「歌うタンゴ」に酔いたいと思います。


 

El dia que me quieras, la rosa que engalana

se vestira de fiesta con su mejor color,

al viento las campanas diran que ya eres mia,

y locas las fontanas se contaran tu amor.

La noche que me quieras, desde el azul del cielo

las estrellas celosas nos miraran pasar,

y un rayo misterioso hara nido en tu pelo,

luciernaga curiosa que vera que eres mi consuelo...

 

 

あなたに愛されるその日

バラの花は最も美しいドレスをまとうだろう

 

風に揺れる鐘が次々と

あなたが私のものだと告げるだろう

 

そして泉は

あなたの愛を語り出す

 

あなたに愛されるその夜

紺碧の空から

星がやきもちを焼いて私達を見つめ過ぎてゆく

 

そしてひと筋の光が

いたずらな蛍の様にあなたの髪に宿り

 

あなたこそが

私の気持ちの全てだと知るだろう・・・