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デジタル音楽について

以前、作曲家の三枝成彰(さえぐさ しげあき)氏のお話しを伺う機会がありました。


講演の内容は、氏の作曲に関することかと思いきや、ボーカロイド「初音ミク」を始めとするデジタル音楽制作に関することでした。


三枝さんによると、現代における商業音楽のほとんどはデジタル制作されたものとのことでした。


確かにポピュラー音楽や劇伴音楽、コマーシャル音楽などのほとんどが、DTM(desktop music)で作られていることは知っていましたが、アナログ作成されたものが一割あるかないかだというお話はとても衝撃でした。


この時三枝氏は、戦時中の《特攻隊》を題材としたオペラ「KAMIKAZE - 神風 - 」の作曲を終えられたばかりで、疲れていらっしゃるはずなのに、デジタル音楽の現状について熱く語られていました。


今後はボーカロイドを使ったオペラを作ってみたいとまでおっしゃっていて、その創作意欲の旺盛さと斬新さにとても感銘を受けました。

 

アナログからデジタルへ

YAMAHA DX7

4トラック・カセットレコーダー


私が20代から30代になる頃、世の中は急激にアナログからデジタルへと変換する大きな波が起こり始めていました。


楽器の世界でも、電気楽器から電子楽器への移行が目覚ましくなってくるのもこの時期でした。

単音しか出せず、音楽制作には多額の投資が必要となるアナログシンセサイザーも健在でしたが、デジタルシンセのニューモデルが各社争うように発売されて行ったのもこの時期です。


私も、4トラック・カセットレコーダー(!?)に1983年発売された名機YAMAHA DX7やドラムマシンをつないでDTMのかじりをやっていました。


詳しいお話は省略しますがMIDI規格によって、たくさんのシンセサイザーや音源を使い、比較的安価にオーケストラ・サウンドまで作れるようになったこの楽器の進歩は、デジタル技術の発展がなければ実現していなかったと思います。


DAWが現代の主流

その後、皆様もご存知の通りデジタル化の波は止まることなく発展し、現在ではコンピューター無くしてはライフラインさえ稼働しないほどになりました。


最初にお話しした音楽制作の現場でも、デジタル化とコストパフォーマンス化が進み、最近ではフリーソフトでもかなり高度のDTMが可能になっています。


今、4トラック・カセットレコーダーでマルチ録音してますなんて言ったら「アマゾンのジャングルから来たの?」と言われてしまいそうです。


DTMという言葉は最近あまり聞かなくなりました。


現代では、やっていることはDTMと一緒なのですが、DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション Digital Audio Workstation)が主流です。


以前は、シンセサイザー、シーケンサー、ドラムマシン、ミキサー、エフェクター、レコーダーなどなど・・と、コンポーポネントで別々に買って接続しなければなりませんでしたが、このシステムでは全部コンピューターの中に入っていると思っていただければ良いと思います。


しかも音質のクォリティの高さや操作性の便利さは、まさに隔世の感があります。

しかもリーズナブルです。


DAWは打ち込みがメイン

私が使っているDAWは、Logic pro X(ロジック  プロ テン)というソフトで、アップルのコンピューターについてくるGarageBandのプロ版ソフトです。


DAWで音楽制作する人の多くは、「打ち込み」といってある一定のパターンを作っておき、そのパーツをつなぎ合わせて全体を仕上げる方法で制作を行っています。


私の場合は、楽譜を書いて作曲していくやり方ですので「打ち込み」自体はなかなか馴染めません。

Logic Proでも楽譜を使って作るコマンドがあるそうなのですが、まだ使いこなせない状態です。


従って、楽譜作成ソフトで作曲したデーターをLogic proへエクスポートし、音源の最後の仕上げに使ったり、レコーディングミキサー・ソフトの様に音源を加工したりに使っています。


アナログは永遠

講演会の後、今となれば冷や汗が出そうなことを私は三枝氏に質問しました。

 

「三枝さんのおっしゃる通りなら、なぜ今、アナログの極地であるオペラを書かれるのですか?」

三枝さんは当たり前のような顔をして「劇が好きだからね。」

とおっしゃいました。

 

人間が人間の声で人間の前で演じるオペラ

出来立てのスコアも拝見しましたが膨大な量の音と言葉の情報が、緻密に美しく描かれていました。

 

最近の演奏会の現場では、コストのかかるオペラやシンフォニーコンサートより、室内楽のコンサートの方が人気があるようです。

デジタル全盛の今だからこそ、人と人が近くで触れ合えるコンサートが好まれているのかもしれません。


私の大大大尊敬する「教授・坂本龍一」氏も、そのデビューアルバム(千のナイフ Thousand Knives, 1978年)で、フェアーライトCMIを見事に操り、その後もデジタルを使った実験音楽やクラシック、ポピュラー・ミュージック、民族音楽などを融合した孤高の世界を作り上げていきました。

  

「気になること」を以前2つほど書きましたが、実は「教授」の病状が一番気になっています。


 教授のデジタルに制作された音楽はもちろん好きです。でも最近はなぜか、教授の生ピアノに心打たれます。

早く私たちのところに帰ってきて、また新しい音楽を聴かせてください!!