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邪悪を取り払う盾 〜 イージス Ⅱ 任務艦隊の出航

主神ゼウスから贈られた盾を使い戦うアテナ

皆さんは船に乗られた経験はおありでしょうか?

ほとんどの方が、フェリーを始めなんらかの船に乗られたことがあるのではと思います。


しかし、自衛艦(護衛艦や輸送艦など各種船舶があります。)に乗船された方はそれほど多くないのではないでしょうか?


私は縁あって、海上自衛隊の護衛艦に約1年4ヶ月乗船しておりました。


今回のブログは、この時の経験をもとに作曲した拙作「イージスⅡ 任務艦隊の出航」のご紹介です。


船乗りとしての経験から生まれた「イージス」

 

プロフィールでお分かりの通り、私は昨年(2013年)の3月まで海上自衛隊の音楽隊で勤務しておりました。

 

海上自衛隊に入ったのは、昭和52年(1977年)10月26日のことでした。

長崎県佐世保市にある教育隊で素養教育を受け、すぐに音楽隊へ配属されるものとばかり思っていましたが、海上自衛官としての資質教育のため乗艦を命ぜられ、第2護衛隊群の護衛艦「たかつき」に乗ることになりました。


自衛艦での勤務はもちろん初めてのことばかりで最初は右往左往しておりましたが、人は慣れるもので

船酔いもしなくなり良い先輩にも恵まれと、今となっては貴重な経験をさせていただいたと思っています。

 

しかし、彼らの勤務はとても過酷です。

 

どこにも逃げ場のない船の上で、長い時は何週間も航海し、昼夜を分かたず訓練が行われます。

ある時は嵐の中を、波をかぶりながら、塩煙に打たれながら黙々と演習に励みます。

暑い日も、寒い夜も。

 

ある意味、人間の生活ではないと言えると思います。

体力はもちろん忍耐力と順応性がなければとても勤まりません。


そしてどんな平和主義者よりも平和を望んでいると思います。

訓練でさえ耐え難いほど大変ですのに、有事となれば、、、と私は乗艦中いつも思っていました。

 

さて、その海上自衛隊のセントラルバンド東京音楽隊が、50回目の定期演奏会を迎える2010年度に私は隊長として着任しました。

その際、彼ら艦船乗組員や航空部隊など、海上自衛隊の第一線で活躍する隊員のために作曲したのが祝祭的なファンファーレに始まる「イージス Aegis」でした。

 

イージス(Aegis)とは、ギリシャ神話の主神ゼウスが娘のアテナに贈った防具の名称で、すべての邪悪を

取り払うとされています。

 

イージスⅡはその続編として、2014年に作曲された作品になります。


祝祭的なイージス、叙事的なイージスⅡ

イージスでは、海上自衛隊で使用されているラッパ譜(艦内の号令に使います)が使用され、曲の様々な場面にコラージュされています。

 

例えば、中間部、オフ・ステージで演奏されるラッパ譜は「速足行進」といって隊員が行進するときに使用されるものです。

 

イージスⅡでも冒頭に「起床ラッパ」が使用されていますし、これも号令に使うサイド・パイプという笛が使用されています。

 

またⅡでは、Ⅰの主要テーマの変形やファンファーレが踏襲されており、共通の互換が保たれてもいます。

 

しかしⅡは、あるストーリーを設定して作曲されており、祝祭的な作品であるⅠと比べるとより叙事的な作品となっています。



ちなみにイージスⅠでも、中間部から主題再現部にかけてちょっとしたストーリーがあり、また、行進曲「軍艦」のモティーフが一瞬出現したりもするのですが、将来出版の機会があればお話ししたいと思っています。


任務艦隊の出航

イージスⅡの曲目解説です。

 

四面を海に囲まれた日本は、常に海と密接な関係を持ってきました。

海は時に自然の脅威となって人々を苦しませもしますが、多くの幸を与え日本人の暮らしを豊かなものにしてきました。

他国との交流も海を通して行われ、日本人は宗教や文化のほか様々な技術を常に海をとおして得てきました。

 

しかし元寇の襲来やペリー艦隊の黒船来航のように、国の存亡をかけた出来事も海からやってきました。この国の安全は海にかかっていると言っても過言ではないでしょう。

 

防衛省自衛隊の海上自衛官は、この海を守る防人として海に空に活躍していますが、艦上での勤務は荒れ狂う波との戦いであり、昼夜を分かたない厳しい訓練や長期に亘る集団生活を強いられる実に過酷なものです。

 

私は、護衛艦「たかつき」砲雷科で約1年間勤務した経験から、海を守る仲間に尊敬と信頼を込めてこの曲を作曲しました。

 

この曲は、ある困難な任務を遂行する艦隊の雄姿を描いた作品です。

 

冒頭では疲れきった彼らに、非情な起床ラッパが告げられます。やがて、サイドパイプ(艦内の号令に使用される号笛)によって「総員集合」が奏され司令官が訓示、艦隊が出航していきます。

 

アラーム(戦闘用意を告げる鐘)が鳴り響き任務開始。

 

果敢に取り組み、見事に目的を達成した彼ら・・・。

勇士を讃えるファンファーレが高らかに響き渡る中、艦隊は堂々と母港へと帰港していきます。

 

なお、オプション楽器の号笛(サイド・パイプ)はインターネット等で購入可能です

が、入手できない場合はオミットして下さい。

 

イメージ音源です。


冒頭のティンパニやピアノは、船底の機関室から聴こえてくる不気味なノイズを表しています。

なお、サイド・パイプは入っておりません。ご了承ください。