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北のまほろば 〜 交響組曲「River」に寄せて (3)

今回のブログは、交響組曲「River」第3曲 激流(げきりゅう)The torrent についてです。 

 

「激流」では、ブナの森に流れる冬の川を舞台に、娘の受難と青年の犠牲が描かれていきます。

(使用している音源につきましては、イメージ音源です。)

 

ある小雪の舞う寒い冬の朝、娘は数人の女集と川原へ水汲みに行きました。

白い息を吐きながら無心に水を汲む娘。

しかし森で出会った青年との一日を思い出すと、つい笑顔に。

 

「何かいいことでもあったのかい?」

そう聞かれても、娘は微笑するだけです。

仕事が一段落し、小雪降る空の彼方には青空も見えます。

女衆は、娘の舞を見ながらしばしの休憩です。


雪に舞う

雪に舞う Dancing in the Snow


小雪降る川原で、舞う娘を描いた曲です。


「激流」の中間部にあたるスローなバラードのような作品ですが、Jazzのエッセンスを加味して作曲しています。


略奪

川原で憩う女衆と娘

そうしているうちに、雪は次第に吹雪へと激しさを増してきました。

 

「そろそろ帰ろうかい」

長(おさ)の女がそう言って皆が帰り支度を始めたその時でした。

 

ただならない物音が上流のほうから近づいてきます。

水汲みに便利な農民の川原と道具を奪い取ろうと、マタギ衆が武器を掲げて襲ってきたのです。

 

女衆は一目散に村へと走り出しましたが、気づくのが遅れた娘は川原を下流へと逃げます。

しかし追っ手の男たちの足は速く、追い込まれてしまいます。

川原の小高い丘へ逃げ上がった娘は、誤って崖から濁流の中に転落してしまいます。

 

その騒動を聞き付け川原へ駆けつけていた青年は、娘を助けるために川へ飛び込みます。

 

やがて

娘は下流の川原で村の男衆により保護され、一命を取りとめました。

しかし非情なことに、青年は行方知れずとなってしまいます。

 

略奪 The Plunder

 第1曲「邂逅の森」にも登場したマタギ族のファンファーレに続き、凶暴で野蛮な「略奪」のテーマが森に響き渡ります。

 混乱し逃げ惑う娘を現す高音部のシーケンス音形に「森」や「青年」のテーマが重なり合います。音楽が高揚する中、青年は川へと・・・。

「略奪」では打楽器が重要な役割を果たします。


吹雪の川


この事故をきっかけに、マタギ族と村人のいさかいは途絶えます。

砦のマタギ族も村人たちも、一緒になって娘を救うために身を犠牲にした青年を必死で探しました。


しかし消息は解ることなく、砦も村も悲しみに暮れて日々が流れました。


間もなくこの大地にも春が訪れます。

しかし今はまだ、森や川、そして人々の心に吹雪が吹き続けています。


吹雪の川 River of the Blizzard

人々の悲しみを表すかのような「川」のテーマと真っ白に雪化粧した「森」のテーマが次第に高揚していくと「激流」のテーマが全てを包み込むように歌いだします。

雪空から、一瞬、日の光が差し込むような長調の第2主題は、まだ見えぬ遠く淡い「希望」の訪れを願って書きました。