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北のまほろば 〜 交響組曲「River」に寄せて (2)

白神山地


白神山地は、青森県南西部から秋田県北西部にまたがる130,000haに及ぶ広大な山地帯の総称です。このうち原生的なブナ林で占められている区域16,971haが1993年12月に世界遺産として登録されました。
 青森県側の面積は、その約4分の3を占め、12,627haとなっています。

下北半島 川内町 畑地区

 

下北半島の中心地 むつ市から南西に国道を行くと

野生猿の生息地として有名な脇野沢村が、また更に北へ向かうとマグロの一本釣りで有名な大間に至ります。

むつ市を出てしばらく行くと川内町があり、その「」という地区はわが国最後の狩猟専業集落があったことで有名です。

つまり「マタギ」の村だった地区です。


 

「マタギ」は東北及び北海道地区で、狩猟を専業として生活していた人々のこと。

 

司馬遼太郎氏によりますと、縄文以前の日本人は野や山を駆け回り、動物や植物、果物などを採取して生活していました。大きな集落を作ることもなく、獲物がなくなれば移動する「移動狩猟民」として暮らしていたとおっしゃっています。

 

ところが大陸から稲作がもたらされたことによってその生活環境は大きく変化します。

多くの人口を養うことができる「米」を栽培することによって、人々はしだいに集落を作り定住するようになっていきました。

 

しかし、悪く言えばその日暮らしでお人好しな狩猟民達は、農耕民により次第に北へ北へと押しやられたのだと司馬さんはおっしゃっています。

 

よって奥州(東北地方)以北は、そのような人々の住む非文化的な土地として明治維新まで蔑視されることがあったようです。


自然と戦う狩猟民

マタギの人々は、最大の獲物である熊のほか、アオシシカモシカやニホンザル、ウサギなどを獲り、鳥も撃ち落としたことでしょう。

 

また川に入り魚をとっては、河原で焼いて食べたかもしれません。

森の木の実やきのこを採取し、薬草からは薬も作ったことでしょう。

 

その生活体系は、原始的で素朴なだけにとても魅力的です。

都市生活者の自分にはできないライフスタイルがそこにはあり、魅了されます。

 

夏 「邂逅の森」後半部ではこの狩猟の民の「狩り」の様子、強靭なパワーとスピード感を描きました。

 


狩猟の民と農耕の民

 

交響組曲「River」は、この狩猟民と農耕民の対立を描いた作品でもあります。

 

第1曲「邂逅の森」の曲目解説です。

 

第1曲  夏 「邂逅􏰀の森」

"A Forest of Fagus crenatas

 

東北地方のある大きなブナの森の中に一本の川が流れていました。

そのほとりには狩猟の民である「マタギ」の部落と農民の村があります。

マタギ衆と山里の農民は仲が悪く、始終争いごとばかり起こしていました。

 

曲は、うっそうと茂るブナの森をあらわすフレンチホルンのテーマで開始されますが、その静寂を破るニ短調 12/8拍子のテーマが聞こえてきます。これが「川のテーマ」で「森のテーマ」とともに、組曲全曲を通じて再三出現する重要なテーマとなっています。

 

やがて、3/4拍子で狩猟部落の首領の息子である青年のテーマが現れます。

憂愁を帯びながらも、強靭な力と若者特有の楽天性を秘めた旋律が森に鳴り響きます。

 

突然、狩の合図を表す金管群のファンファーレが鳴り狩が開始されます。

変拍子を含むプレストのこの部分は、日本に農作が広まる以前、移動狩猟で生活していた人々の荒々しくまた力強い姿を描いています。

 

狩の音楽が絶頂に達し、最後に川と森のテーマが回想されると、曲は高揚して終わります。

 

「邂逅」とは、「出会い」を意味する言葉です。

この組曲では、森を基点として出会いと抗争が描かれていきます。

 

第1曲「邂逅の森」では、その中心となる舞台である森と川、そして主要な登場人物である青年、 そして狩猟部落の人々が描かれています。

 

夏 邂逅の森 より 狩りとエンディング・テーマ

Piano Version

Symphonic Wind Orchestra Version