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”静” 〜 絶望から希望の歌へ

平安時代末期

平安の世を謳歌する平家との抗争に大きく翻弄されながら、最後には鎌倉幕府という日本史に残る大改革《武家政治》を実現した「源頼朝(みなもと の よりとも)」

 

その頼朝には、腹違いの弟がいました。

それが有名な

源義経(みなもと の よしつね)」です。

しかし、二人の関係は決して幸福なものではなかったようです。

 

一時は、頼朝の部下として天才的な活躍をした義経でしたが、最後は兄頼朝に追われ、奥州(現在の岩手県)平泉の地で無念の最後を遂げたと言われています。

 

その義経の妾(愛人)として名を残すのが、京都の白拍子「静御前」です。



白拍子とは、その当時踊られた舞踊の名前また踊り手を指す言葉ですが、踊り手は男装した女性のダンサーだったようです。

 

義経と静御前は義経の兄 頼朝に追われる身となり、吉野(現在の奈良県南部)で離れ離れとなってしまいます。義経はなんとか逃亡しますが、静は捕えられ頼朝の住む鎌倉へと送られてしまいます。

 

やがて、無情にも頼朝から「白拍子を舞え」と命ぜられた静は、義経を慕う和歌を歌い舞ったと伝えられています。

 

ぼんぼり祭り奉納演奏

その静が、白拍子を舞ったよされる社(やしろ)が現在も神奈川県鎌倉市にあります。

鎌倉時代からの長い歴史と伝統を持つ「鶴岡八幡宮」がそれです。

 

鶴岡八幡宮では一年を通してたくさんの祭事が行われますが、八月には夏越祭の一環として「ぼんぼり祭り」が開催されます。

境内には多くのぼんぼりが灯り、鎌倉の夏を彩る風物詩として大勢のお客さんで賑わいます。

 


(鶴岡八幡宮 舞殿 写真の奥の大石段を登ると本宮)


2009年8月、私は平成21年度鶴岡八幡宮ぼんぼり祭の奉納演奏のために、静御前を題材にした作品を作曲しました。

ビッグ・バンドの編成で作曲し、静御前が舞ったとされている「舞殿」の前で初演させて頂きました。

 

静・舞・想・翔

また、2013年初夏には同曲を吹奏楽版にリアレンジし義経が逝去したとされる岩手県で初演致しました。本来であれば平泉が最適地ですが、その際は盛岡市のコンサートで演奏させて頂きました。

 

さて、”静” Sizuka for Wind Orchestraは約15分ほどの作品です。

 

曲は、〈〉〈〉〈〉〈〉の4部から構成され、

義経を慕う静の心情が「絶望から希望へ」と飛翔していく様が描かれています。

 

また鎌倉幕府の公式文書である「東鑑(あずまかがみ)」に記載された、静御前が詠ったとされる二首の和歌を曲中に挿入しています。


第1部 静

竜笛で開始され、静の詠った

 

しづやしづ しづのをだまき くり返し

昔を今に なすよしもがな

しずの布を織る、麻糸をまるく巻いたおだまきから糸が繰り出されるように、たえず繰り返しつつどうか昔を今にする方法があったならいいのに


が歌われます。

 

そして、Alto Sax.が静の物悲しいモノローグを奏で、彼女の揺れ動く心情が描かれます。


第2部 舞

頼朝から白拍子を舞うことを命ぜられた静は、屈辱の中にも義経への思いを胸に舞を演じます。


フリューゲルホーンとソプラノ・サックスで演奏されるノスタルジック(得がたいものや失われたものに対して心惹かれるさま)な旋律は、

やがて即興演奏、木管ソリ、全合奏などで繰り返され、次第にフェイドアウトしていきます。


第3部 想 / 第4部 翔

吉野山  峰の白雪  ふみわけて

入りにし人の  跡ぞ恋しき

吉野山の峰の白雪を踏み分けて、姿を隠して

いったあの人(義経)が恋しい

 

第3部「想」では、静のもう一首の歌が、素直に優しく歌われます。

第4部「翔」では静の義経への純粋な想いが、

天空を駆けるように飛翔していきます。


またファスト・ジャズ・ワルツで書かれた「翔」は、第2部「舞」のテーマと、第1部「バラード主題」が掛け合う形で作曲されています。


暗から明へ、希望への歌

静はやがて鎌倉から解放され京の都へと帰りますが、その後の消息は不明とされています。

一方義経は奥州藤原家に難を逃れますが、やがて頼朝の征伐の刃に倒れたとされています。

しかし二人についての明確な資料は残っておらず、実際は歴史上のミステリーになっているようです。

 

時代の波に翻弄された静御前と義経

でも、そこには純粋にお互いを想う心があったと信じて、私はこの曲を作曲しました。

 

もしかしたら、その後二人は出会えたのかもしれない・・

そうでなかったとしても、お互いを想う心は強く永遠だったのではないか・・

運命を変えようと、いつも希望を失わず生きたのではないだろうか・・

 

そんな想いで作曲に当たりました。

従って構成は、絶望から希望へ、暗から明へとしました。

 

希望への歌

そんな作品になっていればと願っています。