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J.S.バッハとポール・サイモン

最初にこの2曲を聴いてみてください。

血潮したたる主の御頭

from J.S.Bach / St.Matthew Passion

アメリカの歌

Paul Simon / American Tune


J.S.バッハの最高傑作と言っても過言ではない「マタイ受難曲」と、サイモン&ガーファンクルとしての活動期間は短かったものの現在でもシンガー&ソングライターとして活躍しているP.サイモンの「アメリカの歌」です。

 

お気づきになりましたか?


「アメリカの歌」の前半部分は、バッハと同じ曲です。

どっちが真似をしたのか?

もちろん、P.サイモンが意図的にバッハの作品を引用したのです。

 

血潮したたる主の御頭 について

イエスの弟子の一人マタイが、キリストの受難について記録した「マタイによる福音書」をもとに、イエスが鞭打たれいばらの冠を頭に載せられ侮辱を受ける場面で歌われるコラール(賛美歌)です。


ああ 血にまみれ 傷つき 痛みとあざけりを受けた 主の御頭よ

ああ いばらの冠をかぶらせられ 嘲られる御頭よ
ああ 本来ならば最高の栄光と誉れで 飾られるべき御頭よ
しかし今 最も名誉を傷つけられた 御頭を仰ぎ見る

主よ なんと恐怖に満ちた 気高い御顔なのでしょう
偉大な支配者であるあなたが つばきをかけられるとは
なんと青ざめた御顔でしょう

誰があなたの目の輝きを消し去り 辱しめ 痛めつけるのでしょう 


不要な音の一つもない簡素ながら充足した響きの中に、イエス・キリストへの迫害に対する深い悲しみ無念絶望とその裏返しの賛歌が歌われており、心を奪われずにはいられません。

アメリカの歌について

 

 

 

 

 

 

一方、P.サイモンの「アメリカの歌 American Tune」では、彼らしいセンシティブナイーブな,でも少しだけポジティブなメッセージが伝わってきます。

 


 
 
 
 
 
 
 

僕はよく誤解され たえず迷い
なんども見捨てられ 虐げられた
 
でもいいさ 平気だよ ただ疲れただけさ
陽気になんてなれないさ
故郷は遠い あまりに遠い

             

くじけない人間なんていないさ
不安を感じない友達もいない
砕けない夢 破れない夢もないだろう
               
でもいいさ 平気だよ 今日までそうやってきたんだ
でもたどる道を思うと 考えてしまう
どこで 間違ってしまったんだろう


* 自分が死ぬ夢を見たんだ
      魂が 僕の身を離れ 僕を見下ろして 
      微笑んだ
 
      空を飛ぶ夢を見たんだ
      大空から 僕の目は見たんだ
      自由の女神が 沖に出るのを
 
空を飛ぶ夢を見たんだ
僕らはメイフラワー号に乗り 月へ飛ぶ船に乗り
この不安な時代に アメリカの歌を歌う
 
でもいいさ 平気だよ 幸運な時ばかりはないさ
明日はまた働きに出る
だから しばしの休息を
しばしの休息を取るだけさ 
 
 * P.サイモンのオリジナル部分です。


マタイについてもう一つ

 

 

マタイ受難曲冒頭の合唱曲

《来たれ、娘たちよ、われとともに嘆け》 (Kommt, ihr Töchter, helft mir klagen)

の一節です。

 

バスの音形に注目してください。

 

ゴルゴダの丘の処刑場に向かって、十字架を背負い、重い足取りで登っていくイエスの動きが見事に表現されています。

 

厳格で緻密な声部進行が求められるポリフォニック(複声部)音楽、それを大成させたバッハだからこそ出来た書法ですが、素晴らしく大胆で的確です。

 

実際に聴いてみると、なおさらそのすごさがお分かりになると思います。

P.サイモンについてもう一つ

1968年にリリースされたサイモン&ガーファッンクルのアルバム「ブックエンド」

その中に、P.サイモンが詩人としても優れた資質を持つことを現している曲があります。

 

養老院での老人へのインタビュー音声に続いて流れてくるのが「旧友 Old friends」です。

 

「旧友 Old friends」

 

  オールドフレンズ

  公園のベンチの

  両端にすわっている二人の老人

  その姿は 

  まるでブックエンドみたいに見える
  捨てられた新聞紙が 

  風に吹かれて芝の上を舞い
  彼らの丸い革靴のつま先にからみつく

 

  オールドフレンズ
  残り少ない日々を共にする仲間たち
  コートにくるまったまま
  日が沈むのを待っている

  町のざわめきが木々の間から漏れて
  ホコリのように彼らの肩の上につもる

  僕らもいつかああやって

  ベンチで静かに
  最後の季節を迎えるようになるのか
  70歳になった自分なんて

  とても想像出来ない

 

  オールドフレンズ
  思い返せば あっという間だった
  お迎えももうすぐだ

 

中間部から入ってくるストリングスとホルンによるやや前衛的な間奏も、静かにアルバムタイトル「ブックエンド」のテーマで消えていく実験的な構成も確かな説得力があり、彼の創作の中で長く残っていく作品・アルバムだと思います。

 

 

* ブログのタイトルをクリックするとコメントしていただけます。

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コメント: 2
  • #1

    shimoyama (金曜日, 30 9月 2016 01:34)

    ポールサイモンのファンです。アメリカの歌には何十年も慰められてきました。大変な名曲だと思います。たしかLPレコードのライナーノーツにポールサイモンがバッハの曲を少し借りて作曲したというようなことが書かれていたと思います。サイモンさんが最初から言っていたのだろうと思います。バッハの著作権はとっくに切れているのでは?先生も、サイモン氏のファンだと推察させていただきました。サイモンさんが盗作をしたわけではないことを、このページを読む人にわかるように、少し追加していただければと思いますが。

  • #2

    市川昌弘 (火曜日, 27 6月 2017 18:35)

    人は、誰しも、互いに影響しながら、生を全うして行くものです、63歳にて…。バッハであろうと、巷の酔い人であろうと。